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find your kyoto Vol.2 「絶えることない平安の祈り」 神泉苑

2023/06/28

さまざまなご縁に誘われ、2020年から京都暮らしを始めた俳優の近藤芳正さん。撮影のために呼ばれて来る場所だった京都が新しい拠点となり、ご自身の生き方にも大きな変化があったと言います。三度目の春を迎えた京都での暮らしや、普段からよく通っておられるという『神泉苑』について、お話を伺いました


折りに触れ立ち寄りたくなる拠り所

二条城の南側に位置する史蹟『神泉苑』。御池通り側から石鳥居をくぐると満開の桜が、近藤さんを迎えてくれました。『神泉苑』の起源は約1200年前の794年、桓武天皇が平安京を造営された時代まで遡ります。太古から存在した池と周辺の森林を利用して造られた天皇の庭園は、二条大路から三条大路の南北約500メートル、大宮大路から壬生大路までの東西約240メートルに及びました。大内裏に接したこの地には、歴代天皇が幾度となく行幸し、菊花宴や七夕などの節会行事、観魚や鷹狩・釣りなどのお遊びをされました。『日本後紀』によると、812年に嵯峨天皇がこの地で桜の花を鑑賞し、詩宴を催されました。そこから梅の花見に変わって、桜の花見が普及していきました。

「まずは、ご本尊の聖観音菩薩像や不動明王座像を安置する本堂でお参りし、朱色の法成橋を渡って、雨の神様を祀る善女龍王社へ。そこから、弁天堂、矢剣稲荷社、恵方によって毎年方角が変わる恵方社…すべての箇所にご挨拶をさせていただきます。今日は、先日開催したインスタレーション・ライブ『また、ね』が無事に開催できたお礼をお伝えしていました。『また、ね』は、2022年11月に京都で初演し、2023年3月に東京、京都で再演を果たした新たなプロジェクトです。YouTubeドラマ『おやじキャンプ飯』で出逢った、主題歌を担った谷澤ウッドストックさんと、ポスターなどの写真を担当したJUMPEITAINAKAさんと、僕との三人で面白いことしたいねと話していたことが実現した、貴重な体験でした。数年前には暮らすことも、京都でライブすることも想像できなかったのに、ご縁に導かれて今ここにいる。不思議ですね」

『神泉苑』の法成就池の中島に祀られている善女龍王社は、弘法大師との縁が深いお社です。日照りが続いた824年、弘法大師が雨乞いの祈祷を行い、雨を降らせたと伝えられています。さらに、小野小町が雨乞いの歌を奉納した、静御前が雨乞いの舞を舞ったなど、様々な歴史的人物がこの地で祈りを捧げたとか。中世以後、荒廃しつつあった『神泉苑』を悲しみ、執権の北条泰時が修理した、という記録も『太平記』に残ります。
江戸時代になると、二条城築城により『神泉苑』が縮小されましたが、中興の祖・快我上人や片桐且元、板倉勝重などの尽力により、堂舎が整備され、現在は真言宗寺院として雅やかな面影をとどめます。

「こちらは京都の夏の風物詩、祇園祭との関係も深いんです。平安時代に全国的に疫病が流行った時、その退散を祈願して、当時の日本にあった国の数にちなんで66本の鉾(ほこ)を立てたことが、祇園祭の鉾巡行の起源なのだそうです」

人生にとって一番大事なことは

時代ごとに様相を変え、役割を変え、京都に暮らす人たちの拠り所であり続けた「神泉苑」。今も、お散歩の途中に毎日お参りするご近所の方、旅行のたびにお参りにくる方、桜が咲くのを心待ちにする方、それぞれの目的を抱いた人が庭園にやってきます。近藤さんにとって、『神泉苑』はどんな場所なのでしょうか。

「手を合わせて目を閉じる、祈りは僕にとっては大切な時間です。見えない何かと会話をするというより、静かに自分自身と向き合っているのかもしれません。『神泉苑』は最初に来た時から感じるものがあり、移住するずっと前から通っていました。進む道に迷った時に、自分の中の本当の声を聞くことができる、そんな場所だと感じています」

目には目に見えない感情をお芝居で表現することについて、4〜5年前から考え方が変わってきたそうです。

「違う人物を演じる必要はなく、自分の経験を総動員すればいいのだと気づきました。芝居が良くなるためには、自分磨きするしかない。ひとりの人間としてどのように生活しているかが、非常に重要だと思います。京都に移り住んで2年半、パートナーがいて、そのご家族もいて、親戚付き合いがあって、仕事とは関係のない友人ができたりして。今までと違う人脈がどんどんつながることが、本当に楽しい。大切な人との時間、彼らの幸せを願えることが、人生にとって一番大事なことだと、ようやくわかった気がしています」


近藤芳正(こんどうよしまさ)
1961年、愛知県出身。1976年の『中学生日記』出演をきっかけに、1979年に劇団青年座研究所に入所。映画『ラヂオの時間』、『THE 有頂天ホテル』、NHK大河ドラマ『真田丸』、舞台『笑の大学』など、三谷幸喜氏の作品に数多く出演。その他の主な出演作品に、ドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』『魔法のリノベ』『おやじキャンプ飯』、NHK連続テレビ小説『なつぞら』・『カムカムエヴリバディ』など。現在は“ラコンチャン”として舞台制作やプロデュース作品も手掛け、時には作・演出にも関わる、エンターテインメント界のオールラウンダー。

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JEWELRY / kagayoi hanaogi pinbrooch , hanazakari mitsubachi pinbrooch & sakura pinbrooch
PHOTO / Takahiro Takami
STAYLIST / Teppei Hamanoue (rainmaker)
TEXT / Riho Tatehara